2007年03月20日

2、椅子 【いす】

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古い椅子だった。
 長い祭りの時代、物がたくさんあって捨てて空間を得ることをずっとしてきた目からすると、そんな古い椅子を使っているのは無駄のように思える。
 アンティークでもアンテ−ク風でもなければ、エキゾシズムを感じさせるわけでもないその椅子。
 
 昭和の半ば、高度経済成長時代。世界は大きく広がっていくのに、材料が足りないで、木目のような壁紙とか、皮のようなビニールとか、表立ってところだけを模造したできの悪い世代のもの。
 それでも椅子は眞の部屋にぴったりと収まっている。
 本当はキッチンに置かれるテーブルとセットになった四脚の椅子の一つ。
 四人家族で使う椅子だったと眞はいう。
 父と母と、家にくるこがなかった祖父と、自分の椅子。
 大人になったら出して使う筈で物置に入れられていた。そのおかげでこの椅子だけは残っている。
 他の椅子はどうなったの?
 初めてそう聞いた時、眞は首をひねった。何か自分の中の言葉を引っ張りだす時の癖。
「海のそこだと思う」 
posted by 管理人 at 19:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 100のお題| edit
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